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ネタめも「紀州」とか「鼓ヶ滝」とか

30日、池袋の正蔵師匠は、旦那と小僧が豆を食べだして止まらなくなり、最後は旦那が厠に隠れて豆を食べてるところに小僧も豆を持って入ってて来るという噺。
サゲは「おかわり持ってまいりました」。
なんていう噺だっけ?ご存じのかたお知らせあれ。



トリの三平師匠は「紀州」。
将軍が急逝し、次代の候補となった尾州侯と紀州侯。
将軍を決める朝、尾州侯には鍛冶屋のトンテンカンという音が「テンカトル」と聞こえてきます。
「これは吉兆」と喜び、話しあいの席では貫禄を出そうと「私は将軍の任ではない」とひとまず謙遜してみせる尾州侯。
ところがライバルの紀州侯も同じことをいいつつ、「しかしこれほど請われるなら万民のため…」と、尾州侯が言おうとしていた言葉をそのまま使って、あっさり次期将軍に決まってしまいます。
サゲは帰り道、また鍛冶屋の音が「テンカトル」と聞こえてきます。
尾州侯が、まだ大逆転があるかもしれないと思った矢先、鍛冶屋が焼けた鉄に水をさすと…“キシュー!”

当日は襲名披露の大千秋楽だけあって、脱線に脱線を重ね(だからモトが短いこの噺を選んだのかも)、 おまけに前のエントリーに書いたとおり、そうとう舞い上がった様子だったので、かなり原型をとどめない(失礼)状態ではありましたが、なにしろおめでたい席です。大きな拍手を贈ります。

続いて1日、上野のトリ・正蔵師匠は「鼓ヶ滝」。
鼓ヶ滝で和歌を詠んでいた男がうたた寝をしてしまい、気づいたら真っ暗。
近くの民家に助けを乞うと、歌好きの家族が暮らしていて、男の歌に次々に手直しを入れていき、結局男の歌は全く違う、だが素晴しいものに変わってしまいます。
男が気付くとそれは夢の中のことで、家族というのは和歌の神さま、鼓ヶ滝で眠ると皆その夢を見るとのこと。
サゲは「夢の中とはいえ失礼をした。バチがあたるのでは」と心配する男に「鼓だけにバチは当たりません」。

マクラで、前座時代から古典を演じたかったのに、父で師匠の初代三平は駄洒落のような噺しか教えてくれなかったと振り、いい落語は客を笑わせるばかりでなく泣かせるんだと振ってのこのネタ。
これはかなり、自分にプレッシャーを与えるというか、そうとうに自信がなければできない振りだと思うのですが、家族の直しを素直に受け入れ感謝する男、その家族が神さまだと聞き、さらに反省する男の姿に、大笑いしながらもしっかり感動させていただきました。
この二日間で、かなり正蔵師匠びいきになった気がします。

ちなみにこの噺、モトモトの題は「西行(さいぎょう)鼓ヶ滝」といって、男は高名な歌人・西行の青年時代だった〜という設定があるそうです。
by yukihiroxx | 2009-05-02 23:37 | 演劇のこと(鑑賞作品)
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